2021年12月に「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会」として警視庁が行った有識者検討会の報告書概要の内容が明らかになりました。
この内容が2022年の通常国会に提出される電動キックボードや小型低速車の核となるもので、道路交通法の改正案が可決されれば日本の電動モビリティ事情が大きく変わる重要な内容となっています。
車両区分
一定の大きさ以下の電動モビリティは、最高速度に応じて以下の3類型に分ける。
これは時速6~10kmのおもちゃタイプ電動キックボードを歩行者扱いとし、歩道走行を可能とするもの。立って乗っても座ってのってもOKとする内容です。
時速20kmまで出るタイプの電動キックボードは最高速度の制御が関係する小型低速車の扱い。
① 歩道通行車(6~10km/h以下)
- 電動車椅子相当の大きさ(長さ120cm×幅70cm×高さ120cm (注) )
- 歩道・路側帯を通行(歩行者扱い)
- 立ち乗り・座り乗りで区別しない
(注) 安全性を向上させるためのセンサー等の扱いについては、今後検討
② 小型低速車 (15~20km/h以下)
- 普通自転車相当の大きさ(長さ190cm×幅60cm)
- 車道、普通自転車専用通行帯、自転車道を通行
※ 歩道、路側帯通行時は、最高速度の制御とそれに連動する表示が必要
③既存の原動機付自転車等 (15~20km/h超)
- 車道のみ通行
- 免許やヘルメット等のルールは維持
小型低速車
小型低速車の扱いになる電動キックボードの車格や免許、年齢についての規定案について。電動キックボードで歩道走行する場合は何らかの表示(最高速度や歩道走行中)が必要になる内容となっています。
最高速度、車体の大きさ等
- 最高速度: 一般的な自転車利用者の速度(15~20km/h)と同程度で検討
- 車体の大きさ:長さ190cm×幅60cm ※普通自転車相当
- 立ち乗りでも座り乗りでもよい
運転することができる者
- 運転免許の必要性までは認められないが、一定の年齢制限を設けることが適当
- 小型低速車の販売やシェアリング事業を行う者に対して、小型低速車の利用者への交通安全
教育を行うことを求めるべき
通行場所
- 車道、普通自転車専用通行帯、自転車道を通行
※ 歩道、路側帯通行時は、最高速度の制御とれに連動する表示が必要
自動歩道通行車
無人走行する歩道通行車(自動歩道通行車)に係る基準は、以下の方向で検討
※この基準を満たさないものについては、今回検討している新たな交通ルールには含めない
EVの無人配送車両に関する新しい枠組みの内容、歩道を無人EV配送車両が走行する場合の重要な内容です。
最高速度、車体の大きさ
- 最高速度:6km/h
- 車体の大きさ:長さ120cm×幅70cm×高さ120cm (注) ※電動車椅子相当
(注) 安全性を向上させるためのセンサー等の扱いについては、今後検討
通行場所
- 歩行者と同じ
(歩道、路側帯、道路の右側端)
通行方法
- 歩行者相当の交通ルールに従う (信号や道路標識等に従う、横断歩道を横断など)
無人走行という特性を踏まえ、走行させる主体を行政機関が把握するための制度を設ける
今後の検討事項
歩道通行車、小型低速車
最高速度
- 歩道通行車の最高速度は、6~10km/hの範囲で検討
- 小型低速車の最高速度は、一般的な自転車利用者の速度(15~20km/h)と同程度で検討
小型低速車利用者への交通安全教育の在り方
運転免許を不要とするが、基本的な交通ルールに関する理解を担保するため、シェアリング事業者・販売事業者による利用者に対する交通安全教育の実施を求める
小型低速車及び自転車のヘルメット
小型低速車及び自転車の運転者について、ヘルメットの着用促進を図っていく
状態が変化するモビリティ
最高速度の制御と連動した表示の在り方
表示の方法や切替えによる最高速度の制限の担保方法等については、 更に検討
自動歩道通行車
制度整備の在り方
- 走行させる主体を行政機関が把握するための制度を新設
- 車体の安全性の確保については、産業界における自主的な取組に期待
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/saisyugaiyou.pdf
電動モビリティ化の準備が進む日本社会
2022年2月の時点では一部のシェアリング業者を除いて実際の運用が難しい電動キックボード、ネットで購入した電動キックボードを自転車感覚で走らせてしまうと大変な道路交通法違反になりかねない乗り物です。
これが2022年に変わる可能性があり、「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会」の報告書通りの内容になれば日本は一気に電動モビリティ化が進むことに。
影響を受ける業界は電動アシスト自転車、自転車、宅配業者など多岐にわたり、電動キックボードがノーヘルで乗れる、免許無しで乗れる以上のインパクトが日本社会に起きうる可能性があります。
とくに無人EV配送車両が認められるとウーバーイーツのような宅配サービスの形が変わる、電動アシスト自転車に荷台を付けたヤマト運種の配送なども変化、保険業界も小型電動モビリティ化に向けた新しい商品などを作ったり…といった変化や新ビジネスの登場など。
「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会」は、新しくできる交通ルールの枠組み以上の問題と変化がある大きなテーマとなりそうです。
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