令和5年7月1日から、道路交通法の一部を改正する法律(令和4年法律第32号)のうち、特定小型原動機付自転車(電動キックボード等)の交通方法等に関する規定が施行され、警察庁から電動キックボードの交通ルール及び罰則・罰金が発表されました。
大雑把な内容は以下のものになります。
- 道路は最高時速20キロ
- 歩道は時速6キロまで、ランプを点滅させる
- 運転免許不要
- ヘルメットの着用は努力義務
- 16歳未満は運転不可
これまでに発表されていた電動キックボードの新ルールを見ると、ノーヘル・無免許・公道走行OK・16歳以上は乗れるといった規制緩和された新しい都市型モビリティといったイメージですが、
警察庁から発表された詳しい内容を見るとナンバープレートや自賠責への加入義務などがあることから単純な規制緩和ではなく、運転免許不要でも罰則・罰金がしっかり設けられている、少なくとも自転車のように公道を乗れてしまう乗り物ではなくなりました。
2023年7月1日からの電動キックボード公道走行は、実質的に自転車・電動アシスト自転車よりも規制が厳しい乗り物になっています。
電動キックボード(特定小型原動機付自転車)の規定
電動キックボード(特定小型原動機付自転車)とは、原動機付自転車のうち車体の大きさ及び構造が自転車道における他の車両の通行を妨げるおそれのないものであり、かつ、その運転に関し高い技能を要しないものである車として道路交通法施行規則で定める基準に該当するものをいいます。
道路交通法施行規則で定める基準は次のとおりです。
【車体の大きさ】
長さ:190センチメートル以下
幅:60センチメートル以下
【車体の構造】
- 原動機として、定格出力が0.60キロワット以下の電動機を用いること。
- 20キロメートル毎時を超える速度を出すことができないこと。
- 走行中に最高速度の設定を変更することができないこと。
- AT機構がとられていること。
- 道路運送車両の保安基準第66条の17に規定する最高速度表示灯が備えられていること。
これが2023年7月1日(令和5年)から公道走行可能な電動キックボードの規定になりますが、それ以前に製造された電動キックボードは、2024年12月23日(令和6年)までの間、最高速度表示灯の取付けが猶予されています。
それまでの間に取り付けられていない場合は型式認定番号標又は性能等確認済シール若しくは特定小型原動機付自転車に取り付けることとされている標識(ナンバープレート)を表示している必要があります。
つまり電動キックボードをちゃんと登録して許可を得た状態にしておかないと公道走行できない乗り物ということ。
さらにこれらの基準を満たさないものは、形状が電動キックボード等であっても、特定小型原動機付自転車にはならず、令和5年7月1日以降も、引き続き、その車両区分(一般原動機付自転車又は自動車)に応じた交通ルールが適用されます。
この基準を満たしていないと原付バイクと同じ扱いなので、ノーヘル・ナンバー無し・免許無し・自賠責無し・保安部品無しの状態で原付バイク(50cc原チャリ)を運転するのと同じ状態、一発免停どころか免取レベルの重大な違反になります。
さらに電動キックボード(特定小型原動機付自転車)は、交通反則通告制度及び放置違反金制度の対象とされています。
これは自転車が撤去されるような扱いではなく、いわゆる駐禁になるのと同じ、恐らく歩道に置いて離れてしまうとバイクと同じように放置違反のシールを貼られ、反則金を納付する流れになるでしょう。
電動キックボードだから反則金を納付しなくてもバレない…なんて思ってもダメ、なぜならナンバープレートを付けつ必要があるので所有者の身元は割れてしまう、ナンバープレートを付けてなければ公道走行できる状態ではない…と、がんじがらめになっています。
保安基準への適合
電動キックボード(特定小型原動機付自転車)は、道路運送車両の保安基準に適合するものでなければ、運行の用に供してはならないこととされています。
その証明をするものが性能等確認済シール等、性能等確認済シール等が付けられているものは、この基準を満たしてます。
特定小型原動機付自転車に適用される保安基準等については、こちら
自賠責保険(共済)への加入
電動キックボード(特定小型原動機付自転車)は、自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済(いわゆる自賠責保険(共済))への加入が義務付けられています。
自賠責保険(共済)については、こちら(自賠責保険ポータルサイト 国土交通省)
2024年3月末(令和6年)まで、特定小型原動機付自転車には原動機付自転車の自賠責保険料が適用されますが、同年4月以降は特定小型原動機付自転車のための新しい保険料が適用される予定です。
その新しい保険料が、原動機付自転車の保険料より安くなる場合については、保険契約者が申請をすれば、一部のケースを除き、相応の差額が返還される予定になっていますが、詳細については、2023年5月現在、金融庁において検討されています。
ナンバープレートの取付け
電動キックボード(特定小型原動機付自転車)の所有者は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)の条例等の定めるところにより、標識(ナンバープレート)を取得し、車体の見やすいところに取付けなければなりません。
電動キックボードに対しては、安全性の観点から、車体幅に収まるような、従来の原動機付自転車(50cc原付バイク)のものよりも小型の標識を市町村において順次交付する予定になっています。
従来の原動機付自転車の標識を交付されていても、小型の標識の交付を受けることができます。安全の確保のため、小型の標識を取り付けるようにしましょう。
標識の取得に関する手続等については、市町村(市役所)にお尋ねください。
歩道を走行するための特例特定小型原動機付自転車
特例特定小型原動機付自転車とは、特定小型原動機付自転車のうち、次の①~⑤のいずれにも該当するもので、他の車両を牽引していないもの(遠隔操作により通行させることができるものを除く。)をいいます。
①歩道等を通行する間、最高速度表示灯を点滅させていること
②最高速度表示灯を点滅させている間は、車体の構造上、6キロメートル毎時を超える速度を出すことができないものであること
※アクセルの操作により特定小型原動機付自転車を6キロメートル毎時を超えない速度で走行させている場合は、この要件を満たすものではないため、特例特定小型原動機付自転車には該当しません。
③側車を付けていないこと
④ブレーキが走行中容易に操作できる位置にあること
⑤鋭い突出部のないこと
令和6年12月23日までの道路運送車両の保安基準上の経過措置により、最高速度表示灯を取り付けていない特定小型原動機付自転車は、①の要件を満たさないことから、特例特定原動機付自転車にはなり得ず、歩道又は路側帯を通行することができません。
電動キックボードの新ルールで何故このような特例特定小型原動機付自転車の内容があるかというと、理由は電動キックボードで歩道を走行するための措置を設けたということになります。
さらにアクセル操作により…の注意書きがある理由は、シニアカーと区別するための措置。シニアカーとは時速6キロまでしか出ない電動で歩道走行する乗り物で、お爺ちゃん・お婆ちゃんが乗っているアレのことです。
ただし電動キックボードの電源をOFFにした状態の人力で時速6キロ以上出した場合についての規定はありません。
主な交通ルール・罰則・罰金
電動キックボードが2023年7月1日~免許無しでのれるようになるからといっても違反を行うと罰則・罰金が科せられます。
これは免許不要でも公道・歩道で電動キックボードを走行するにはナンバープレートが必要なため、所有者が不明な状態にはならない、だから罰則・罰金を科すことが可能になるといったものです。
16歳未満の者の運転の禁止
電動キックボード(特定小型原動機付自転車)を運転するのに運転免許は必要ありませんが、16歳未満の者が特定小型原動機付自転車を運転することは禁止されています。
また、特定小型原動機付自転車を運転することとなるおそれのある16歳未満の者に対して特定小型原動機付自転車を提供することも禁止されています。
飲酒運転の禁止
お酒を飲んだときは、電動キックボード(特定小型原動機付自転車)を運転してはいけません。
また、酒気を帯びている者で、飲酒運転をすることとなるおそれがあるものに対し特定小型原動機付自転車を提供したり、飲酒運転をすることとなるおそれがある者に対し酒類を提供し、又は飲酒をすすめたりしてはいけません。
二人乗りの禁止
電動キックボード(特定小型原動機付自転車)は、二人乗りをしてはいけません。これは親が運転、子供が前に乗るような形も不可になり、例えば幼児をオンブ紐で乗せるのも不可。
動物を乗せることへの規定は2023年5月現在は存在していません。
車体の点検・整備
電動キックボード(特定小型原動機付自転車)を安全に利用するためには、乗車前に自分自身で点検をすることが必要です。
主な点検項目
- ブレーキの遊びや効きは十分か
- 車輪にガタやゆがみはないか
- タイヤの空気圧は適正か
- ハンドルが重くないか、ワイヤーが引っ掛かっていないか、ガタはないか
- 灯火はすべて正常に働くか
道路運送車両法(昭和26年法律第185号)の規定により定められた基準等に適合しない特定小型原動機付自転車を運転してはいけません。
車体の整備で重要な点はタイヤの空気圧であり、おもちゃのような電動キックボードはタイヤがゴムでなく樹脂製だったりして空気を入れる構造でない場合は要注意になります。
当然ながら車体の整備・点検にも罰則・罰金があります。
通行する場所
【車道通行の原則】
車道と歩道又は路側帯の区別があるところでは、車道を通行しなければなりません(自転車道も通行することができます)。
道路では、原則として、左側端に寄って通行しなければならず、右側を通行してはいけません。
例外的に歩道等を通行できる場合
特例特定小型原動機付自転車に限り、道路標識等により歩道を通行できることとされているときは、その歩道を通行することができます。
※「普通自転車等及び歩行者等専用」の道路標識が設置されている場所等を指します。
ただし、歩道を通行するときは、その歩道の中央から車道寄りの部分又は普通自転車通行指定部分を通行しなければなりません。
歩道を通行するときは、歩行者優先です。歩行者の通行を妨げることとなるときは、一時停止しなければなりません。
また、特例特定小型原動機付自転車は、著しく歩行者の通行を妨げることとなる場合を除き、道路の左側に設けられた路側帯(歩行者用路側帯を除く。)を通行することができます。
(普通自転車通行指定部分がない場所において、特例特定原動機付自転車で歩道の中央から車道寄りの部分以外を通行した場合等)
ココまで電動キックボードの細かい新ルールを読み進めた方の中には『電動キックボードやめようかな…』なんて考え始めている方もいると思います。
しかしまだまだこんなもんじゃありません。
信号機の信号に従う義務
電動キックボード(特定小型原動機付自転車)は、道路を通行する際は信号機の信号等に従わなければなりません。
特に、次の場合には、歩行者用信号機に従わなければなりません。
- 歩行者用信号機に「歩行者・自転車専用」の標示がある場合
- 特例特定小型原動機付自転車が横断歩道を進行して道路を横断する場合
信号を守るのは自転車でも同じことですが、あえて表現するなら免許不要でもナンバープレートが付いた電動キックボードで信号を無視するとどうなるか?ということです。
通行の禁止
電動キックボード(特定小型原動機付自転車)は、道路標識等によりその通行を禁止されている道路又はその部分を通行してはいけません。
ここまでくれば運転免許を持ってる方は分かるはず、つまり電動キックボードは自転車のように乗れない乗り物ということです。
分かりやすい例は、自転車で一方通行の道路を好きなように走ってもおとがめなしだが、電動キックボードで一方通行逆走すると3月以下の懲役又は5万円以下の罰金になります。
道路の横断等の禁止
電動キックボード(特定小型原動機付自転車)は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路の横断や転回又は後退をしてはいけません。
また、道路標識等により横断、転回又は後退が禁止されている道路の部分においては、当該禁止された行為をしてはいけません。
割り込み等の禁止
前の車両が交差点や踏切等で停止や徐行しているときは、その前に割り込んだり、その前を横切ったりしてはいけません。
また、これらの車両の間を縫って前へ出たりしてはいけません。
踏切の通過
踏切を通過しようとするときは、その直前(停止線があるときは、停止線の直前)で一時停止をし、自分の目と耳で左右の安全を確かめなければなりません。
なお、踏切に信号機のある場合は、信号に従って通過することができます。
警報機が鳴っているときや、遮断機が降りていたり、降り始めたりしているときは、踏切に入ってはいけません。
左折又は右折の方法
左折するときは、後方の安全を確かめ、その交差点の手前の側端から30メートルの手前の地点に達したときに左側の方向指示器を操作して左折の合図を行い、できるだけ道路の左端に沿って十分に速度を落とし、横断中の歩行者の通行を妨げないように注意して曲がらなければなりません。
右折の方法
信号機等により交通整理の行われている交差点では、青信号で交差点の向こう側まで直進し、その地点で止まって右に向きを変え、前方の信号が青になってから進む、いわゆる「二段階右折」をしなければなりません。
なお、赤信号や黄信号であっても自動車や一般原動機付自転車は青の矢印の信号によって右折できる場合がありますが、この場合でも特定小型原動機付自転車や自転車は進むことはできません。
信号機が設置されていない交差点等では、後方の安全を確かめ、その交差点の手前の側端から30メートルの手前の地点に達したときに右側の方向指示器を操作して右折の合図を行い、できるだけ道路の左端に寄って交差点の向こう側まで直進し、十分に速度を落として曲がらなければなりません。
右折する場合、その交差点において直進し又は左折しようとする車両等があるときは、その進行妨害をしてはいけません。
駐停車が禁止されている場所
電動キックボード(特定小型原動機付自転車)は、道路標識等により停車及び駐車が禁止されている道路の部分のほか、次に掲げるその他の道路の部分においては、原則として停車し、又は駐車してはいけません。
- 交差点、横断歩道、自転車横断帯、踏切、軌道敷内、坂の頂上付近、勾配の急な坂又はトンネル
- 交差点の側端又は道路の曲がり角から5メートル以内の部分
- 横断歩道又は自転車横断帯の前後の側端からそれぞれ前後に5メートル以内の部分
- 安全地帯が設けられている道路の当該安全地帯の左側の部分及び当該部分の前後の側端からそれぞれ前後に10メートル以内の部分
- 乗合自動車の停留所又はトロリーバス若しくは路面電車の停留場を表示する標示柱又は標示板が設けられている位置から10メートル以内の部分(当該停留所又は停留場に係る運行系統に属する乗合自動車、トロリーバス又は路面電車の運行時間中に限る。)
- 踏切の前後の側端からそれぞれ前後に10メートル以内の部分
以上が電動キックボードの新ルール…というか、ほとんど原付きバイクの免許に近い内容になっていますが、さらに細かい規定があります。
もっと詳しく知りたい方、これから公道で電動キックボードを乗りたいは警視庁の特定小型原動機付自転車(いわゆる電動キックボード等)に関する交通ルール等についてを一読しましょう。
交通反則通告制度
改正法により、電動キックボード(特定小型原動機付自転車)の運転者がした道路交通法の規定に違反する行為も、交通反則通告制度の対象とされました。
交通反則通告制度は、車両等の運転者がした道路交通法の規定に違反する行為のうち、比較的軽微であって、現認、明白、定型的なものを反則行為とし、反則行為をした者(一定の者を除く。)に対し、行政上の手続として、警視総監又は道府県警察本部長が定額の反則金の納付を通告し、その通告を受けた者が反則金を任意に納付したときは、その反則行為に係る事件について公訴が提起されず、一定期間内に反則金を納付しなかったときは、本来の刑事手続が進行することを内容とする制度です。
特定小型原動機付自転車運転者講習制度
改正法により、電動キックボード(特定小型原動機付自転車)の運転に関し、違反行為を繰り返す者について、その危険性を改善し、将来における交通の安全と円滑を確保するための措置として、特定小型原動機付自転車運転者講習制度が設けられました。
これにより、都道府県公安委員会は、特定小型原動機付自転車の運転に関し、次に掲げる違反行為(特定小型原動機付自転車危険行為)を反復して行った者に対し、講習の受講を命ずることができることとなりました。
【対象となる違反行為(特定小型原動機付自転車危険行為) 】
- 信号無視
- 通行禁止違反
- 歩行者用道路徐行違反
- 通行区分違反
- 歩道徐行等義務違反
- 路側帯進行方法違反
- 遮断踏切立入り
- 優先道路通行車妨害等
- 交差点優先車妨害
- 環状交差点通行車妨害等
- 指定場所一時不停止等
- 整備不良車両の運転
- 酒気帯び運転等
- 共同危険行為等
- 安全運転義務違反
- 携帯電話使用等
- 妨害運転
ここまで読んで頂いた方は2023年7月1日から公道で電動キックボードを乗ることを真剣に考えている方だと思います。
しかし警視庁の交通ルール及び罰則・罰金を見ると、これなら50ccの原付バイクの方が良いのでは?電動アシスト自転車・自転車のほうが使い勝手が良いのでは?と感じる方が多くいると思います。
大きなポイントとなる部分がナンバープレートや性能等確認済シール等であり、所有者が分かった状態である電動キックボードでないと公道を走行できないということ。
だからこそ罰則・罰金を科すことが可能となり、電動キックボードの公道走行には自転車のような自由度はありません。
電動キックボードの購入を検討されている方は2023年7月1日から始まる新ルール・罰則・罰金をよく考慮してからにしましょう。
特定小型原動機付自転車の安全な利用を促進するための関係事業者ガイドライン
特定小型原動機付自転車の安全利用を推進するため、パーソナルモビリティ安全対策協議会は、特定小型原動機付自転車の販売、レンタル、プラットフォーム提供に関わる事業者向けのガイドラインを公開しました。これらのガイドラインは、改正道路交通法により特定小型原動機付自転車と定義された電動キックスクーターに関連する事故や違反の増加を受けて作成されました。
ガイドラインの目的は、子供、高齢者、障害者を含むすべての道路利用者の安全を確保し、事業者が交通安全を推進するための十分な措置を講じることを奨励することです。具体的には、交通ルールを理解させるためのリーフレットやDVDが付属した教材の提供、購入者が交通ルールを復習できるようにURLをメールで送付するなどの措置が含まれています。
また、車体にGPS機能等を付加して通行場所を把握し、利用者の携帯電話に位置情報を送信することで、道路上での違法駐車を防ぐなどの対策も提案されています。
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/img/tokuteikogata/guideline.pdf
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